ブラック企業退職希望の新人君を優しく宥める腹黒上司のお姉さん。

※当台本はフリー台本ではありません。依頼者様以外の使用は厳禁です。

こんな時間までお疲れ様。
なんの作業してたの?私に手伝える事があったら、何でも言ってね。
……え?退職届?どうしたの、会社辞めたくなっちゃった?
うん、うん……。そうなんだ。ごめんね、君がそこまで思い詰めてた事、気付けなくて……。上司失格だね。私ってば、ここに勤めてもう長いのに、まだまだ自分のことで手一杯だったみたい。
確かに部長は、若手の子たちに対して当たりがちょっと強いのかもしれない。
実はね、私も入社したての頃はいっぱい怒られて、みんなの前でいっぱい泣かされちゃったの。
同期もどんどん辞めていって、相談出来る人たちもいなくなって……。毎朝、目が覚めるたびに憂鬱だった。今日こそ会社辞めてやるんだって、いっつも思いながら電車に乗って嫌々出社してたもん。
でもね、思ったの。このままじゃ駄目だって、変わらなきゃいけないってね。
だって、言われっぱなしじゃ悔しいもの。そうでしょう?
だから私は、その悔しさをバネにして頑張ったわ。反骨精神、ってやつ。
ここに居る誰よりも結果を出して、もう誰にもお説教なんかさせて堪るもんですかって一生懸命頑張った。
そしたらね、初めて営業成績1位を取れたの!毎日毎日怒られて泣いてばかりだった私がこの会社で1番になれたんだよ。
君も知っての通り、私は別に頭だって良くないし、要領だってどちらかと言えば悪い方だし、学歴だって大した事ないのにね。
でも、歯を食いしばって頑張ったの。誰よりも働いて、誰よりも努力して、あんなに嫌いだった会社が、今では大好きになっちゃった。
勿論、私のことを泣かせた部長たちを前にすると、当時のこと思い出して少し気持ちが沈んじゃうけど……。
だからね、君にも諦めてほしくないな。私と一緒に、もう少しだけ頑張ってみない?
君ならきっと出来るよ。私より若くて、頭も良くて、辛抱強いんだもの。
ってことで、この辞表は私が預かっておくね。君に「本当の限界」が来たら、これは私から人事部長に提出しておくから。
今日はもう、帰っていいよ。ゆっくり休んで、明日からまた頑張ろう?
じゃあね、おやすみなさい。

(辞表をビリビリに破り捨てる音)

……辞めさせるわけ、ないでしょう?
全く、人手が足りないこんな時に退職だなんて何考えてるんだか。
まあでも、あの調子ならあと3年は粘れそうね。
それまでに、もっともっと優秀な新人クンが入社してきてくれるといいんだけど。