幼馴染の押しかけ女房が俺の家で勝手に料理を作っているんだが?

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げ、なんでお前が居るんだよ!?
ここ、俺んちなんだけど……。って、うわあ……。また勝手に料理作ってるのかよ。
八宝菜に酢豚、天津飯麻婆丼……。なんなんだ、その組み合わせは?
八宝菜と酢豚は肉料理で被ってるし、天津飯麻婆丼だって丼物じゃねえかよ!
こんなの、俺ひとりで全部食えるワケないだろ?
なあにが妻の務めだ!お前はただの幼馴染だろ。結婚した覚えも、それどころか付き合った覚えすらねえぞ。
そもそもお前、料理ヘタクソだし……。ってことで、見なかった事にする。俺は他所で晩飯食ってくるから、じゃあな。
……いや、頑張って作ったとか言われてもだな。全力で料理に取り組んでも不味かったら意味ねえだろうが。
そもそもお前、ちゃんと味見してるか?メシマズってのはなァ、大体味見を疎かにしてる場合があるんだよ。
今回はちゃんと味見してるって?へえ、今回は……ね。馬鹿、毎回しとけっつーの!
愛情は込めただあ?そんなモンで飯が美味くなるなら苦労はしないんだよ、ったく。
わかった、わかった!食えばいいんだろ、食えば!
とりあえず、まずは八宝菜からいくか……。
ん、ぐ……。ンン、う……。
うえ、なんだこれ。野菜のエグみがハンパない……!タケノコは中まで火が明らかに通ってなくて硬いし、片栗粉だって溶けずに塊で残ってるじゃねえかよ……。
酢豚もいやに酸っぱいんだよな。どんだけの量、酢を入れたんだか。うっ、なんだか胸焼けがしてきた……。
おい、期待を裏切らない不味さだったぞ。お前、本当に味見したのか?もう一回、ちゃんと食ってみろよ。
はあ?なんで俺がお前に食わせてやらなきゃならないんだよ。自分で食え!お前が作った料理だろうが。
ああもう、わかった!わかったから!!!
……折角だから、このほぼナマ状態のタケノコと片栗粉の塊部分を食わせてやろう。
ほら、口開けろ。どうだ?不味いだろ?え?そんな事ないだって?
……お前の作る料理が下手くそな理由がよーく分かった。味覚が狂ってる。馬鹿舌ってやつだな。いや、味付けの好みの問題とかじゃねえよ。
俺の好み?そうだな……。ん?玉子焼きの味付け?ん〜、しょっぱい方が好きだな。目玉焼き?それはもう醤油一択だろ。なに?卵かけご飯?それも醤油一択……って!全部玉子料理じゃねえか!お前、俺にどんだけ玉子食わせる気だァ?
天津飯も食ってみろだって?見た目はまあ、八宝菜とか酢豚よかマシに見えるけど……。
あ?食べさせてやるから口開けろ?ったく、お前もしかして、美味い料理作るのが目的じゃなくて、俺にそうやって自分の手で餌付けするのが楽しいだけじゃねえのか?
……はいはい。わかったわかった。あー……う、ん〜……。
ン、天津飯は意外とイケるな。これは一応、そうだな。美味いって言えるかな。
つくづく、お前の感覚がわからねえよ……。八宝菜と酢豚をこれだけ不味く作るやつが、どうして天津飯だけうまいこと出来るんだか。どんなセンスしてるんだ。
なんだよ、今度は麻婆豆腐を食えって?
ああもう、急かすなって!あー……う、ンン……ンンンン!!!!ぐはっ、ごほごほ……っ。
かっっっっら!!!!どんだけ唐辛子突っ込んだんだ!?
いや、確かに辛いのは好きだけど限度ってモンがあるだろ?
うえ、舌どころか唇までピリピリしてきた……。粘膜という粘膜が痛い……!
くそ、お前も食ってみろよ。ホラ、俺が食べさせてやるから口開けろ。
……どうだ?辛いだろ?え、丁度いい?
やっぱりお前の舌、どうにかしてるよ……。
はあ、頼むから今度メシ作る時はちゃんと誰かに正規の手順を習ってからにしろよな。
……駄目だ、こいつ。全然人の話なんか聞いちゃいねえ。
こら、抱きつくな!っていうか、天津飯以外の飯はお前が一人でちゃんと全部片付けとけよ?
はあ、これから俺の胃袋はどうなっちまうんだろ……。