ヤンデレ攻によるお仕置きセックス

こだわりコースより御依頼

頂いたご依頼内容
受が他の人と仲良くしてたために怒ってお仕置きセックスをする

頭上にて纏め上げられた手首は学校指定のネクタイによってその自由を失われ、陸はぎり、と密かに奥歯を噛み締める。
使用されなくなってしまった備品の墓場と化したこの埃っぽい旧体育倉庫の中、所どころ綿がはみ出してしまっている古びたマットの上にこちらの四肢を縫い留めたその相手はというと、どうしてだか加害者の立場であるというのに酷く傷ついた表情を浮かべていた。

「……ねえ、陸。どうして僕を怒らせるような事ばっかりするの」

不埒な熱を持った男の人差し指が、するりと陸の首筋、頸動脈が走るラインをそっとなぞり上げる。

「もしかして、陸は不安なの? 僕の愛情を確かめたくて、そうやって他の男にいい顔したりして試すような真似してる?」

問いかけられ、反射的に首を横へと振りそうになった陸であったが、寸でのところで思いとどまり、下唇を更に強く噛む。
何故なら、彼はとうの昔に正気を失ってしまったからだ。
仲の良い友人であったはずなのに。いつからか、彼は歪んだ愛情を、まさに化けの皮と称するに相応しい瘡蓋でも剥ぐように、己の内側に隠された狂気を陸の眼前へと晒し、理不尽な関係を強いたのである。
この肉体を強引に暴かれたのはいつだったか――。以来、朝陽はこちらの意思などまるで気にしていないのか、それとも理解していながら受け入れる事を拒んでいるのか、自身が抱いた愛情と同じだけの恋慕を陸にも返せと迫るのだ。こちらは彼とあくまで親しい友人のままでいたいのだと、何度も訴えたにも関わらずである。

「大丈夫だよ、僕は陸以外の人間を好きになったりしない。これまでも、これからも……。ずっとずっと、陸だけを愛してる。それなのにさ――」

辿る指先が不意に下顎を強く摘み上げ、その怒りを露わにする。

「どうして、他の男と楽しそうにするの?」

どうやら朝陽は、陸がクラスメイトたちと昼食の最中に談笑していた事が気に食わなかったらしい。なんのことない、学生からすれば日常的な光景であるにも関わらず、それすら歪んだ解釈で受け止めてしまう彼の思考はもう、理解の範疇を越えてしまっている。

「僕は、陸さえいればそれでいいのに。陸もそうでしょ? だからもう、他の奴に笑いかける必要も会話する必要だってない。いい加減、わかってよ。これ以上、僕のこと傷つけないで……」

瞬間、降り注いだあまりにも深すぎる口付けは、呼吸さえも自身の肺腑に余さず取り込んで、一体化することを望んでいるのではないだろうかと思わず危惧してしまうほどに恐ろしく熱烈なものだった。

「ン、かは……っ」

無遠慮に潜り込んできた舌先が、上顎や歯列を思うがままに蹂躙し、生き物のように妖しく激しく暴れ回る。
まるで捕食されているようだ、と。意識の片隅で考えたその瞬間、肝が冷えた。今の朝陽ならば、骨の一本すら残さずこの肉体を喰らい尽くしてしまうのではないかと思い至ったからだ。
突飛な妄想であったが、しかし――あながちそれが、行き過ぎた推論ではないという現実を陸はその身を以て痛いほどに理解している。

「……ああ、ごめん。唇、切れちゃったね」

舌を絡め合ったその最中、朝陽の犬歯がつぷりと陸の下唇に沈んだ際、どうやら乾きがちな唇が傷ついて出血してしまったようだ。
顔を上げた朝陽の口端にはほんの僅か、口紅痕のように掠れた血痕が残されていた。

「陸ってば、震えてるの? 怖がる事ないのに……。僕たちは今から、気持ち良いコトをするんだよ。ほら、今までだってしてきたじゃん。陸、ここいじられるの好きだったよね? 一番奥にある膨らんだところ……。わかる? 僕が引っ掻くたびに陸ったら腰揺らしてさ、女の子みたいによがってた」

いつの間に下準備を済ませていたのだろうか、ローションのような粘液を纏った朝陽の指先が手際よく剥ぎ取られてしまったスラックスと下着の向こう側、本来であれば排泄器官であるはずの窄みの中へと前触れなく潜り込んでくる。

「う、あ……!」
「ふふ、やっぱりココ好きなんだ? 気持ちよさそう」

前立腺を突かれた際に生じるその悦楽は、もしかすると自らの肉体、そして精神をも蝕む恐怖から逃れるための防衛本能なのかもしれない。
断続的に与えられ続けるその熱は、いつだって陸の肉体を淫らに溶かし続けていた。が、思考は、そして理性は、それが性行為であると認めることを頑なに拒んでいるような気がして、陸の情緒は不安定に大きく揺らめく。

「嫌だ、朝陽……っ! 頼むから、もう……」

こんな関係は終わりにしたい、と言い出せたらどんなに楽だったろう。しかし、はっきりと口にしたところで恐らくは、陸の真意など永遠に伝わりはしないのだ。
もはや朝陽の想いは、一方通行でしかない。こちらが彼を受け入れようが、拒絶しようが、結末は同じだった。

「……もう、何? もしかして、挿れてほしいの?」

自身のベルトを緩めながら、朝陽はうっとりと微笑んだ。
学校中の異性――否、もしかすると同性の羨望すら集めているかもしれない端正な顔立ちに浮かべられたその幸福そうな笑顔は今の陸にとって、鬼気迫る般若に匹敵する畏怖の対象だった。
彼の幸せは、自身の犠牲によって成り立つのだと思い知らされるようで怖かった。一方が満たされるにつれ、一方が朽ち果てていく相互関係が迎える結末など、きっとろくなものではない。
どうして朝陽はそれに気づかないのだろう。陸の事を愛していると囁きながら、相思相愛を求めながら、彼にはなぜ、こちらの悲鳴が届かないのか。

「ああっ、ああああァ!」

程なくして、互いの肉体は深く深く、繋がれた。
異物を吐き出そうと蠢く内壁の感覚が気持ち良いのだろう、悦楽と苦悶の間で啜り泣く陸に対して朝陽はというと、愛嬌に溢れた双眸をうっとりと眇め、恍惚の溜息を深く溢した。

「陸のナカ、すごく気持ち良い。僕の事こんなに締め付けて、離したくないって悦んでる。あは、でも今日は意地悪しちゃおうかな」

常ならば手加減なく与えられる律動が、今日に限ってはその拍子が酷く不規則であった。加えて強引に高められた陸の熱、性器の根本には二本目のネクタイがきつく巻きつけられ、腹の奥底から湧き上がってくる絶頂を残酷にも堰き止めている。

「これは、お仕置きだよ。もう二度と、陸が僕以外の男に気を向けないようその身体に教えてあげなくちゃね」

突き上げられるたび、呼吸が止まる。下腹が脈打つ。
苦しい、気持ち良い、逃げ出したい、楽になりたい。
発散出来ない快楽が血流に乗って全身へと広がり、大きく膨らんでいくのが分かる。このままでは肉体が破裂してしまうのではないかと震えるほどに、それは陸の心身を掻き乱していった。

「ン、ああ! 嫌だ、朝陽……っ」
「嫌じゃないよ。陸はちっとも嫌がってなんかいない」
「あっ、ふァ……! ンン、あああっ」
「ふふ、これじゃお仕置きにならないじゃんか。いつもより気持ちよさそうな顔してる――陸ってば、苦しいのが気持ち良いの?」

身を捩り、みっともなく泣き喚くことで陸は際限なく膨れ上がる暴力的な快楽から気を逸らそうと必死だった。
が、しかし。その退路を悉く朝陽によって絶たれ続け、気がつけばそこは袋小路だ。

「許して、朝陽……っ、俺が、悪かったから……ァ!」

残された手段はただ一つ、眼前の男に縋り付くことだけだ。

「陸ったら、涙で顔ぐちゃぐちゃになっちゃったね」

腰を穿ちながら、今度は小動物でも慈しむような柔らかな口付けが悲哀に濡れた目元や頬に何度もふわりと押し付けられていく。
紛れもなくそれは自分に向けられた愛情だというのに、どうしてこんなにも痛みを伴うのだろう。与えられる苦悶も、快楽も、怒りも、そして優しささえも、鋭い刃物のように陸の心身を切り裂きながら少しずつ形をなくしていくようだった。

「……大丈夫、もう怒ってないよ。僕はね、結局のところ何されたって陸のこと許しちゃうと思う。だって、こんなにも大好きだから」

耳朶に吹き込まれる甘い睦言は、もはや死刑宣告に等しかった。

「ずっとずっと、一緒にいよう? これから先、死ぬまで――ううん、死んだ後も僕は陸を手放すつもりなんてないから。天国に昇っても、地獄に堕ちても、僕たちは愛し合い続けるんだ。ね?」

瞬間、一層強い突き上げと共に性器の根本を戒めていたネクタイが解かれ体内に渦巻く熱が一気に解放へと押し寄せる。

「あ、あああァ! だめ、朝陽……!」

訪れる浮遊感、そして急降下。
荒れ狂う波のような悦楽に押し出されるような形で絶頂に達しながら、陸は涙に滲む視界の向こう側、愛とも憎しみともつかない複雑な色を浮かべてこちらの顔を見下ろしている朝陽の口端が美しく弧を描くその様を、ただぼんやりと、力無く眺めながらごくりと唾を飲み込んだ。
もう二度と、この男が与える呪縛を振り解くことは出来ないであろう事を薄々予感しながら。