バレンタインのお返しに手作りチョコ&遊園地チケットをプレゼント

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―自宅にて―

わざわざ僕の家まで来てもらって、ありがとう。
驚いたでしょ? こんな古ぼけた洋館にひとりで住んでるなんてさ。まあでも、広くて静かだし。僕は結構気に入ってるんだよ。
えっ、お化けが出るんじゃないかって? うーん、今の所そういうのは見たことないけど……。でも、居るなら会ってみたいなあ。
君は怖いの苦手? あはは、そうなんだ。大丈夫だよ、こう見えて僕はホラー耐性強いから。それにここは僕の家だからね。お化けが出てきたときは、そうだなあ……。家賃請求して居候させてあげようかな。ふふ、冗談冗談!

えっと、実はね……。今日は、君に渡したいものがあるんだ。
これなんだけど、あの、ちょっと形は悪いかもしれないけど……。
でもね、頑張って作ったんだ。チョコレートなんて作るの、初めてだったけど、でも、どうしても自分で作りたくてさ。
ほら、今日はホワイトデーだから。なにかお返しをしなきゃと思って僕も自分で作ってみたんだ。市販品のマシュマロとかにするべきかなとか、それともお菓子じゃなくて何か別のものをプレゼントするべきかなとか色々考えたんだけど……。僕もね、君と同じチョコレートを作ってみたいと思ったんだ。
あはは、お菓子作りなんてロクにしたことないのにね。慣れてないから台所もグチャグチャになっちゃって、実はチョコレート作るよりも片づけの方が時間掛かっちゃったんだあ。
でも、凄く楽しかった。レシピ本を探すところから始まって、調理器具も揃えて、近所のスーパーまで材料を買いに行ったりして。
失敗もいっぱいしたけど、全然平気だった。どうしても君に喜んで欲しくて、夢中になってたんだ。こんなにも人の為に一生懸命になったの、久々だったかもしれない。
……僕ね、嬉しかったんだ。バレンタインの日に君からチョコを貰ったとき。味が美味しかったのは勿論なんだけど、なんて言うのかな……。その、あったかくなったんだ。
ああもう、上手く表現できない! 要するに、ええと、嬉しくて。
いやいや、嬉しかったってのはさっきも言ったか。うう、色々と伝えなきゃって思ってたのに、肝心の言葉が浮かんでこないよ。
と、とにかく! このチョコレート、君に受け取って欲しいんだ。
大丈夫、味は保証するから。僕が味見した時は美味しかったよ!
形はさっきも言った通り、ちょっと不格好になっちゃったんだけどさ……。型から取り出す時にね、少し崩れちゃった。
本当はハート形になる予定だったんだよ。でも、その……。見ての通り、なんかちょっと不格好だよね。い、一応ね、これはマシな方なんだよ。さっきも言ったけど、何回も何回も失敗しちゃってさ、なかなか綺麗に作れなかったんだけど、最後に出来上がったコレが僕の中では一番の仕上がりだった。そうは見えないけどね。あはは。
君から貰ったチョコレートがあんまりにも素敵だったから、僕も食べるのが勿体ないくらい綺麗で美味しいやつを作りたかったんだけど……。修行が足りなかったみたい。これを機に、お菓子作りの練習始めてみようかな。
そしたらさ、君に試食して欲しいんだけど、駄目?
え? 君が教えてくれるの? やったあ、ありがとう!
いつか君よりお菓子作り上手くなってみせるから、覚悟しておいてよね。きっと来年の今頃は……。うん、もっともっと美味しいお菓子を君にプレゼントするね。
だからその、良かったら……。来年も君のチョコレート、食べさせて欲しいな。

あっ、そうそう! 今日はこれだけじゃないんだよ。
というか、あんなに美味しくて素敵な贈り物のお返しが、こんなに不恰好なチョコレートじゃ全然釣り合ってないからね。
じゃーん、遊園地のペアチケット! いつだったっけ、君も行きたいって言ってたよね。だからさ、今日は僕と一緒に遊びに行こうよ。もちろん、君が良ければなんだけどさ……。
うん、じゃあ決まりだね。今日は丸一日、目一杯楽しもう!
あ、折角だからチョコレートだけじゃなくてお弁当とかも作っておくべきだったかな……。今から材料買いに行ったんじゃ遊ぶ時間が少なくなっちゃうし……。じゃあさ、今度二人でどこか遊びに行く時は一緒にお弁当作ろうね。僕は君に料理を教われるし、お昼ご飯の準備も出来るしで一石二鳥!
ね、約束だよ。きっと美味しいだろうなあ、君が作るお弁当。折角だから、今日の帰りに本屋にでも寄ってお弁当のレシピ本も買ってこようかな。
ふふ、楽しみなことが目白押しだね。

―遊園地にて―

ふう、初っ端から飛ばし過ぎちゃったかな。あんまりにも楽しかったから色んな乗り物で遊んじゃったけど……。大丈夫、疲れてない?
そっか、良かった。今日は君を楽しませるのが最優先だからさ。
……まあ、君以上に僕の方が楽しんでる感が否めないけどね。
でも流石に疲れちゃったから、少し休憩でもしようか。
どうする? カフェで何か飲みならがゆっくりするのもいいし、売店でポップコーンでも買ってそれをつまみながらベンチとかで休憩するのもいいけど。
……観覧車に乗りたいの? うん、確かにいいかも!
ここの観覧車、結構大きいから一周するまでにたっぷり時間あるみたいだし、景色も眺められて気分転換には良いと思うよ。
実は僕も、どこかのタイミングで乗りたいと思ってたから。
じゃあ、行こう。楽しみだね。

わあ、結構遠くまで見えるんだね。
ええと、僕の家は……。あそこら辺かな。どう? 見える?
えっ、どこどこ? あ、ホントだ! アレ、僕んちの屋根だ! 
君、目がいいんだねえ。ふふ、こんな高い所から自分の家を眺めるだなんて、なんだか不思議な気分だな。
ってことは、あそこが普段買い物に行くスーパーで、あの辺りが学校かな。で、君の家はあっちの方だったよね。どう? 見える?
あっ、あそこ! この間、オープンしたばっかりの水族館だよ。
ここからでも結構目立つねえ。相当大きいみたい。今度、一緒に行ってみない? イルカのショーとか見てみたいなあ。
……ただこうやって景色を眺めてるだけでも結構楽しいもんだね。
なんだか気持ちがスッキリするっていうか、落ち着くっていうか。
時間がゆっくり流れていく感じ、僕は好きだな。もちろん、折角遊園地に来たんだから色んな乗り物で遊びたいし、美味しいものだっていっぱい食べたいけどさ。
君とこうして二人きり、ぼーっとしてるのも悪くない……よね。
あはは、僕らしくないかな? 勿論、賑やかなのが一番好きだよ。
でもね、どうしてだろう。のんびりしたこの時間がさ、ずっと、ずーっと続けばいいなって。一瞬、思っちゃったんだ。
それぐらい、この空間が心地良いって事なのかな。ふふ、もしかすると……。普段はやかましいくらいの僕がこんなにもリラックス出来てる理由は、君と一緒に居るせいかも。
……なーんてね! らしくないこと言っちゃった。
なんだか良い雰囲気だったからさ、僕も流されちゃったみたい。
あ、そろそろ一周するみたいだね。さっきまであんなに高いところにいたのに、もう地面がこんなに近い。あっという間だったなあ。
なんだかちょっと、名残惜しいなあ。
あのさ。君さえ良かったらなんだけど……。もう一周、あともう一周だけ、一緒に乗っていたいな。ダメ?
……ん、ありがとう。じゃあ、このままもう一周乗っちゃおっか。
もうちょっと、こうしていたんだ。
ねえ、僕も、そっちに……。今度は君の隣に、座っていてもいい?
ふふ、なんだかヘンな感じ。今日は一日中、こうやって一緒に居るのにさ、まだまだ全然足りなかったみたい。
明日も明後日も、これからさきもずっと……。君との楽しい時間が続くといいな。