クラスメイト女子×童貞

震える指先で自室の扉をゆっくりと開いた僕の複雑な心境とは裏腹に、辺見はというと女の子らしかぬ無遠慮さでズカズカと部屋の中へ踏み入り、あろうことか真っ先にベッドへと腰を下ろすや否やまるで他愛もない雑談を繰り広げるかの如きさりげなさでこう言い放った。

「平良くんも早く来なよ。私とシたいんでしょ?」

強引な誘い文句を吹っ掛けながら掻き上げられた彼女の艶やかな髪に、思わず視線を奪われる。

「あ、えっと……。その……」

事の発端は、その伸ばしかけの髪だった。
あれは文化祭の始まる手前頃だったろうか。どういう心境の変化が生まれたのか、快活な彼女が突然、髪を伸ばし始めたのだ。
それまで辺見に対し、何か特別な想いを抱いた記憶はない。
だけど、伸びた毛先がはしゃいだように揺れる様を眺めているうち、僕は身の程知らずの恋に落ちてしまっていたのだ。

「……早くしないと、ご両親にバレちゃうかもよ?」
「えっ、あ……」

悪戯っぽく放たれた甘い脅迫にいざなわれるようにして、足をもつれさせながらどうにか僕はベッドサイドへとたどり着き、幾分か躊躇いながら彼女の隣にようやくそっと腰を下ろす。
僕の部屋の、僕のベッドで微笑む辺見は、何故だかひどく妖艶に見えた。
――否、それはこちらの下心が見せた幻影なのかもしれない。
まだ交際すら始めていない二人が、これから此処でセックスをする。
そんな夢のような展開に、僕は溺れているだけなのだ、と。

「……ッ」

こちらからも何か声をかけた方が良いのだろうかと逡巡していたその瞬間、待ちきれないと言わんばかりの急いたキスを唐突に辺見から贈られ、いよいよ僕は自分を取り繕うための言い訳すらそのまま口付けごと呑み込んでしまった。
砂糖菓子かなにかのように柔らかく甘い彼女の唇は、啄むような動作を繰り返しながら僕の下唇を弄び、やがてはそれを割って舌先を潜り込ませてくる。

「……っ、ん!」

口の端から唾液が零れるのも厭わずに、相手の呼吸すらも奪わんとしているような深い深いキスだった。
情けがない事に女性経験がないどころか、血縁者以外の異性と手を繋いだ記憶さえない僕は、貪るような口づけ一つでとてつもない興奮を覚え、早くも下着の奥に隠したままの愚息がむくむくとその頭を擡げる様をどうにも抑えることが出来ない。

「ンン、待って……」

それを悟られたくなくて僕は身を捩ったのだが、目ざとく興奮の兆しを見つけたらしい辺見は舌を繋いだまま、くすりと小さく笑い声を零すと、

「可愛いね、平良くん」

先程までの強引で無遠慮な所作とは裏腹に、酷く艶っぽい吐息を絡めてそう囁いた。

「辺見……っ」

助けを求めるように彼女の名を呼んではみたものの誘惑の手は止まぬまま、僕を翻弄し続ける。
なにせ異性とこんな状況に陥るのは初めてだったので、抵抗を示す事も、主導権を奪う事も出来やしない。
まったく、情けない限りであったが、当の彼女はそんな僕の体たらくを気にしていないどころかむしろ好機と言わんばかりの大胆な手つきで、僕の薄っぺらな肉体を制服越しに弄り始めている。
不埒な指先はまず、高鳴る胸を滑り落ち、みぞおちの辺りを悪戯に引っ掻いた後、あっという間に下腹へと辿り着いた。

「ァ、やめ……っ」

――そこから先へは、進んでほしくない。
そんな建前とは裏腹に、僕の愚かな欲望は今や張り裂けそうなほどに膨れ上がり、未だ纏ったままのスラックスを窮屈そうに押し上げている。

「大丈夫、怖くないから。いっぱい出して、いっぱい気持ち良くなろ?」

揶揄するような口調で笑いながら、遂に彼女はベルトを抜き取り、チャックを下ろして、下着の中へとしなやかな指先を潜り込ませてきた。

「……ンン!」

まず根元の辺りを柔く握りこまれ、思わず腰が大きく跳ねてしまう。
そして絶妙な力加減を保ったまま根元から亀頭へゆるゆると扱き上げられたその瞬間、とてつもない熱と悦楽に包まれた。

「うあっ、あ……」
「もうガチガチだね。実は準備万端だった?」

僕のペニスを弄びながら耳元で彼女が再び揶揄いの言葉を投げかけてきたが、それを受け止められるほどの余裕は既にない。
滑らかな指先で攻め立てられる気持ち良さは、これまでに夢想したどんな感触よりも凄まじく刺激的だった。
妄想だけでは決して辿り着けない領域の先で待っていた快楽は、あまりに激しく、そしてあまりに感動的である。
彼女に心奪われてから、自身を慰める時にこの瞬間を想像すらしなかった――と言えば嘘になってしまうだろう。
多少の罪悪感を抱えつつ、何度か辺見の健康的かつ女性へと脱皮しつつある未成熟な肉体を〝オカズ〟に身勝手な妄想で精を吐き出した夜もあった。
だが、しかし。いざそれが現実として訪れた瞬間の衝撃といったらもう――筆舌に尽くしがたいほど僕の心を激しく震わせた。

「辺見、だめだ……ッ。もう……」

射精してしまうから手を放してくれと早々に懇願する僕の声は、情けなく涙に掠れ、同時にみっともなく悦楽に溶けていた。
このまま達してしまいたいという願望と、早々に果ててしまいたくないというくだらない意地が今更ながらにせめぎ合う。

「ダメ、ちょっと待ってて」

と、その時。辺見は掌で弄んでいた熱をふと手放してしまうと、足元に投げ置いていた自身の学生鞄から何かを取り出し、それを僕の鼻先へと突き付けてきた。
正方形の包装用紙に包まれた〝ソレ〟を実際にこの目で見たのは初めてかもしれない。だが、どういった場面で使用されるものなのか――さすがの僕も知っている。

「コレ、付け方わかる?」

彼女の問いかけに、幾分か躊躇いながらも首を横に小さく振った。
保健体育の授業でひと通りの手順を習った記憶はあったものの、実際に使用した試しのないそれ、避妊具をきちんと装着出来る自信など皆無だった。
付け損じればどういう事になるか――。
とろけそうな悦楽に包まれながらも万が一の事を思うと、肝が冷える。
ここは正直に助力を請うべきだと縋るような視線を辺見へ向けると、

「いいよ、教えてあげる」

彼女はいつも学校で見せるような明るい笑顔を向けた後、手にした避妊具の封をそっと破り、中身を僕へと手渡したのであった。




「あ、ン……っ! そう、もっと……」

ようやく潜り込んだその先は、先程受けた手淫よりも数倍――否、数百倍の快楽で僕を包み込んでくれた。

「ん、気持ちいよ……。平良くんの、意外とおっきいから奥まで当たるの、すごく……いい、ッ」

互いに着衣のまま繋がり、揺さぶられ、弄り合う。
彼女の膣はまるで僕のペニスを待ち望んでいたかのように激しくうねり、更なる律動を求めるかの如くきつい締め付けを何度も繰り返す。
長年、挿入される事を待ち望んでいたような感触と、こんなにも優しく刺激的にはしたない男の欲望を迎え入れてくれる女性器の神秘。
劣情にまみれながらも僕はひどく胸を打たれ、馬鹿のひとつ覚えのように腰を揺らしつつ何故だか歓喜の涙を零しそうになってしまった。

「もっと、激しくしてもイイよ……」

僕の首に腕を絡めて、引き寄せながら辺見がねだる。

「それとも、ゆっくりの方が好き?」
「ッ、く……!」
「あは、もうイキそうなんだ?」

挿入してまだそう時間は経っていないというのに、血管が浮き上がるほどに膨張した僕のペニスはもはや暴発寸前だった。
折角、挿入を果たしたというのに――だが、今さら律動を止められない程に理性が擦り切れてしまっている。
再び縋るような視線で辺見を見下ろせば、彼女は自らの膝をぎゅっと締め付ける事で僕の腰に制止を促すと、この状況に似つかわしくない明るい笑顔を再び浮かべてみせた。

「落ち着いて、深呼吸しよっか。腰はそのまま動かさないで……そうだ、おっぱい触ってみる?」

気さくに切り出された淫靡な誘いに、思わずごくりと喉を鳴らしてしまう。
そういえば、唇には触れたし、挿入も果たしたというのに女性の象徴である乳房にはまだ一度も手を伸ばしていなかったなと今更ながらに気づいた僕は、心地よい彼女の蜜壺へとペニスを埋めた状態のまま、組み敷いたその華奢な肢体を改めて眺め下ろし、じっくりと観察をしてみる。
制服越しに隆起する、二つの膨らみはそこそこに大きい。
情けがない事に、未だ微かな震えの止まらない右手をそっと動かして、セーラー服の上からその稜線に触れ、掌でゆっくりと包み、ほんの少しだけ感触を確かめるように沈めてみる。

「あ……」

丈夫に作られた制服の布地越しにはっきりと伝わる、柔らかな感触。膣とはまた違う心地の良い手触りだった。
「もっと乱暴にしていいよ」
つたない愛撫がくすぐったいのか、可笑しそうに腰を捩りながら辺見は笑い、更なる誘惑を仕掛けてくる。
こんな柔い感触のものを果たして乱暴に取り扱ってもいいのかどうか――。不安を覚えたが、彼女がいいと言うのだから、恐らくは良いのだろう。

「っ、ごめん……!」

形ばかりの謝罪を口にした後、促されるままに乳房の膨らみを鷲掴み、揉み上げてみる。先程よりも指先を深く沈ませて、よりその柔さを確かめるかの如く、大胆に。
人間の身体にこれほど柔らかい部位が存在したのかと感動を覚えると同時、彼女の膣に埋めたままでいるペニスが熱く滾るような感覚を覚え、僕は思わず眉根を寄せた。
その膨らみを揉みしだけば揉みしだくほど、奥深くまで突き入れた亀頭がぴくりと悦びに跳ね上がるのが分かる。
濡れた内壁の感触と、大きな乳房の心地よい手触りはより一層、僕の理性を熱く焦がして、身勝手な欲望ばかりが己の中で膨らんでいく。
辺見の太腿に阻まれ動きを止めていたはずの腰が、再びはしたなく揺れ始めてしまった。

「っ、ン……。逆に興奮しちゃった?」

しかし、彼女はそれを咎める様子もない。
仕方がないな、と微笑みながら再び僕の首に腕を絡めて抱き寄せると、

「もうイッてもいいよ。いっぱい、動いて……」

とろけるような淫靡な声音で囁かれ、彼女の膨らみを揉み上げる手と、打ち付ける腰に力が籠る。
途端、爪先から痺れるような絶頂が駆け上がり、僕は思わず奥歯をギリギリと噛み締めた。

「ッ、く……!」
「ンあ、ァ……!」

僕が避妊具を隔てた膣内へと吐精すると同時、彼女の細くなまめかしい太腿もまた、ぴくりと悦ぶように跳ね上がる。
溜め込んだ熱を吐き出したせいか、幾分か思考はクリアになっていたものの、未だ僕のペニスを優しく締め付けている辺見の膣内は心地よく、再びこちらの理性を焼き切ろうと貪欲なうねりで劣情を誘い続けていた。

「ねえ、平良くん」

繋がったまま、彼女はふとその身を起こした。
瞬間、熱を吐き出して硬度を失いつつあるペニスをずるりと引き抜かれてしまったので少しばかり残念だと粘膜内のぬくもりを惜しく思ったのも束の間、

「今度は後ろから思い切り突いて欲しいな」

魅惑の提案を持ちかけられ、僕の腰は懲りずに甘く疼き出す。
勿論、それを断れるはずもなく、避妊具を取り換えた後で僕は再び頭を擡げた自身の欲望を彼女の膣へと突き入れ、今度はその細い腰を掴み、本能のまま蹂躙するような律動を繰り返したのであった。



「気持ちよかった。またしようね」

そう言って、小さな口づけを事後に贈ってくれた彼女の姿は、もうこの部屋にはない。
未だベッドの上で初めての悦楽が齎した余韻から抜け出せずにいる僕を残したまま、実にてきぱきと身支度を整えると早々に帰宅してしまったのだ。
僕は先ほどまで辺見が組み敷かれていたベッドへと力なく横たわると、ぼんやりと天井を見上げながら自身の唇を、彼女と重ね合わせたキスの余韻を辿るかの如くゆっくりと指の腹で撫でながら、ふと考え込む。
彼女は、またセックスをしようと約束してくれた。だが、告白の返事は結局のところ、どうなってしまったのだろう、と――。
少なくとも、交際さえ躊躇するような相手と身体を重ねたり、ましてや次回の約束を取りつける可能性はないに等しいのだから、いつかは恋人として受け入れてもらえる日が来るのだろうか。

「……どうしたものか」

ひとつだけ、懸念がある。
あれほどまでに理性を掻き乱すセックスという行為に溺れ続けてしまったら、自分は、そして彼女は、これから先どうなってしまうのか。
思い出すだけで身が震えるような、女体のぬくもりと淫らな感覚。
あれに取り憑かれていつか廃人になってしまいそうだという微かな恐怖を抱きながらも、僕は初めての性行為にまんまと魅了され、まだ見ぬ二度目の彼女との繋がりを心待ちにするのであった。