無邪気女子×流され女子(蜂蜜プレイ)
「ねえ、マッサージしてあげようか」
きっかけは、そんなユウリの何気ない気遣いの言葉であった。
今日は蜂蜜を採取する為に二人で森へと出かけていたのだが、蜜を見つけるまでに手こずってしまった上、それを持ち帰るのもなかなか骨が折れた故に自宅へと帰り着くころには二人とも足が棒となり果てていた。
アミに至ってはその肩から重い荷物を下ろすや否や、動力を失ったからくりの如くベッドへと力なくぐったり倒れ込む始末である。
恐らくそれを見かねたのだろう、ユウリは先ほど二人で採取したばかりの蜂蜜を手に取ると、
「折角だからコレ使ってみない? オイル代わりに使えば疲れだって取れるし、美容にもイイから一石二鳥だよ」
などと提案してきたものだから断り切れず、あれよあれよという間に衣服を脱がされ、アミは改めてベッドへと俯せに横たわる事となったのだ。
「ひゃ……ッ」
露わとなった背中にもったりとした感触の蜂蜜が垂らされたその瞬間、予想外の冷たさに思わずアミは大げさに肩を竦めてしまう。
「こらこら、アミってば。マッサージするんだから身体の力は抜かなきゃ駄目だよ?」
「そ、そんなこと言ったって……!」
ひんやりとした粘液が背中を伝う感触、そしてそれがユウリの温かい掌によって塗り広げられていく感覚がどうにも擽ったい上に気恥ずかしかった。
そして何よりも耐え難かったのは、背骨のくぼみや腰のくびれなど、敏感な場所を絶妙な加減で掠めるユウリの悪戯な指先である。
なにかのツボなのだろうか。時に力強く、時に柔くユウリの指先が凝り固まった筋肉へと沈むたび、どうしてだかは分からないが心の奥底に隠していた劣情を表へと引きずり出されていくような、背徳交じりの奇妙な興奮をアミは覚えてしまっていたのだ。
揉みほぐされているというよりも、纏った殻を一枚ずつ剥がされていくような、もしくは自らを戒める理性を解かれているような後ろめたさに耐えられず、アミは微かに赤く染まった自らの顔をシーツの中へと沈めたまま、自らの背中に伸し掛かり熱心なマッサージを施しているユウリへと制止を求めて口を開く。
「ちょ、ちょっと待ってくれユウリ……!」
「なあに?」
「その、腰のところ……」
指圧を施されるのが苦手だからそろそろ止めてくれと適当な言い訳で誤魔化しつつ訴えてはみたのだが、当のユウリは聞く耳を持たなかった。
「駄目だよ、ちゃんと解さないと」
言いながらユウリは今度、肩甲骨のくぼみを内から外へと指の腹で押し流し始めたのだが、老廃物が排出されていくような心地よさと同時、やはり奇妙な劣情を伴った悦楽がこみ上げてきてしまう。
「……ッ」
もう我慢がならないと身を大きく捩ろうとした、その時。
ユウリの指先がふと柔らかくアミの両肩を掴んだ。
「背中はもう終わったから、今度は仰向けね」
ぐるりと世界が反転したその先、こちらが予想していたよりも随分と近い距離まで迫っていたユウリの無邪気な笑顔と邂逅する。
彼女のマッサージによって呼び起こされた淫らな高ぶりにはとても似つかわしくないその明るい表情を眺めているうち、ひとり身悶えていた自分がとてつもなくはしたない女ではないのかと思えてきて居た堪れない。
そんな後ろめたさを隠すようにアミは視線を逸らしたのだが、蜂蜜に塗れた彼女の指先が今度、あろうことか外気へと晒された自分の乳房へと深く沈んだ為に思わずその目を大きく張り、素っ頓狂な声を情けなくもあげてしまった。
「ひぅ!」
「あはは、擽ったい? でも体の力は抜かなきゃ駄目だよ。次はバストアップのマッサージしてあげるからね」
そんなものを頼んだ覚えはないと訴えたかったのだが、開いた唇から零れ落ちるのは抗議ではなく、情けなく上擦った嬌声交じりの小さな悲鳴のみである。
「冷たいけど、我慢しててね」
「……ンっ!」
あろうことかユウリは手にした蜂蜜を、今度は乳頭めがけて垂らし始めた。
どろりと溶けたそれは甘い匂いを放ちながら胸の突起へと滴り落ち、乳房の膨らみを徐々に伝って散々もみほぐされた背中の方にゆっくりと流れて下っていく。
皮膚の薄い胸元で受け止める蜂蜜の感触は、背中にマッサージを施されていた時よりも更に背徳的で、アミの全身をひどく強張らせた。
「胸ってね、人に揉んでもらうと大きくなるんだって」
相変わらず楽しげな表情を浮かべたまま、ユウリは再びその掌を使ってアミの乳房全体へと蜂蜜を塗り広げていく。
「ぼ、僕は別に胸を大きくしたいわけじゃないのに……ッ」
シーツの上へと組み敷かれたまま、首を左右に振りつつどうか離れてくれと訴えてはみたものの、彼女は止まらない。
その手つきはどこか柔い乳房の感触を楽しんでいるような不埒さを孕んでいるようにも感じたが、きっとそれは身勝手に発情した自身の下心による思い上がりだろうとアミは下唇を強く噛み締めると、とめどなく沸き起こる劣情に流されまいと今更ながらに己を律するべく煩悩に抗う事を試みる。
――だが、しかし。
「ああっ!」
突如、未知なる感触がアミの薄い皮膚を襲った。
ぬるりと乳房の稜線上を這い回る、肉厚で生温い熱。
それがユウリの舌先だと気付いた瞬間、いよいよ思考が沸騰した。
「んー、やっぱり取れたての蜂蜜は美味しいね」
麓から頂へ、膨らみの稜線をなぞるようにアミの乳房を舐め上げながら、ユウリは無邪気な感想を零してみせる。
こんなに美味しい蜂蜜をマッサージだけに消費するのは勿体がないと言いながら、膨らみの上を辿っていた舌先は今度その狭間、谷間の窪みへと辿り着いた。
「ひ、ン!」
尖らせた舌先で膨らみの間を擽られたその瞬間、ぞくりと全身が大きく震える。
――そんな場所が性感帯など、気付きたくはなかった。だが、気付かされてしまったのだ。
「あ、あ……!」
ユウリはアミの胸元へ深く顔を沈めたまま、谷間へと流れ落ちていく蜂蜜を熱心に舐めとっていたが、その舌遣いは紛れもない愛撫である。
掬い取った蜜を飲み込むと見せかけて、彼女はちゅっと音を立てながら濡れそぼった肌を吸いあげていたのだ。
だが、その魂胆を見抜いたところで、今更もう遅い。
「っ、ユウリ……! あ、んんッ」
抵抗らしい抵抗も示せぬまま、遂には乳頭までをも強く吸い上げられてしまう。
「あああっ」
ビリビリと、吸い付かれたそこから全身へと広がる電流のような悦楽。
はしたないとは分かっていても、アミは身悶えながら大きな嬌声をあげるしかなかった。
固くしこり始めた突起に柔く吸い付かれながら、ちゅくちゅくと淫らな音をたてて何度も舌先で転がされる感触が堪らない。
乳房への愛撫がこんなにも刺激的なものだったとは、そしてそれをユウリの掌、唇によって思い知らされる事になるとは予想だにせず、アミはかぶりを振りながらもすっかりと彼女の手管に溺れ、シーツの波の上で溺れもがいていた。
「アミ、とっても気持ちよさそうだね」
乳房を伝う蜂蜜をあらかた舐め終わったらしいユウリがようやく顔を上げ、赤く染まったアミの耳元でくすくすと笑い声をあげる。
その声と吐息が存外にも熱っぽく掠れていた為、アミが驚いて視線を投げかけると、
「ユウリ……」
先ほどまで無邪気な笑顔を浮かべていたはずの彼女の頬はアミと同じく朱を帯びて、淫らな色に溶けていた。
それを目の当たりにした瞬間、欲情とはまた別種の高ぶりが沸き上がり、アミの胸をどくりどくりと高鳴らせる。
てっきりユウリは、遊び半分でこのような愛撫を仕掛けてきたのだと思っていた。が、しかし。翻弄されはしたなく悶絶する自身と同じく彼女もまた。同じように劣情からくる熱に浮かされていたとは。
「なあに、アミ」
恍惚に溶けたユウリの顔が、より一層近くに寄せられる。
紅潮した頬と、熱を湛えて潤んだ瞳。間近からそれを見上げているうち、自身が味わっている悦楽を彼女にもどうにか分け与えてやりたいという衝動に駆られ、アミは恐る恐る両手を伸ばし、ほんのり赤らむユウリの頬をそっと包んだ。
「ぼ、僕も……っ、するから……」
「するって、なにを?」
「ッ、ユウリのこと……、気持ち良くするから……!」
「ホント? 嬉しいな」
言いながら綻ぶ彼女の口元は優しげであったが、こちらの顔を見下ろしたまま纏った衣服を自ら一つずつ脱ぎ落していく姿は思わず息を呑むほどに淫らである。
まるでアミにその様を見せつけるかの如く、ゆっくりと。
たっぷり時間を掛けてようやく現れたユウリの肌は陶磁器のように白く透き通っていたが、興奮を湛えている為だろうか、薄桃に色づき、妖しく熟れていた。
そんな魅惑の肌へと惹きつけられるようにしてアミはその手を頬から滑り落とすと、幾分か躊躇いながらもユウリが自身へそうしたように、指先を乳房の膨らみへとそっと沈めてみる。
「あ……っ」
そんなアミの不慣れた手つきを模倣するようにユウリもまた、蜂蜜に塗れたままでいる掌でこちらの乳房をそっと包み、今度は隠しようのない下心の溢れる淫猥なリズムでゆっくりと膨らみを揉み潰した。
「ほら、アミ。私とおんなじように触ればいいんだよ」
五指を柔く蠢かせながら、時折乳頭を爪の先で引っ掻く。
その動きを何度も反復されるうち、割り開かれた両の足は徐々に力を失い、快楽を享受するたびにビクビクと大袈裟に跳ね上がった。
しかし、ユウリのことも気持ち良くすると口にしたのだから今回はされるがままというわけにもいかないと、アミは身悶えながらも彼女の愛撫に倣って掌の中の膨らみを何度も揉み返し、指の腹で胸の突起を擦るように押し潰してみる。
「ン、……そこ、気持ちいいかも」
ユウリが片目を眇めながら、ほんの僅か照れくさそうな微笑を浮かべた。
「私の気持ちいいところは、きっとアミも気持ちいいよね」
「あ、ふ……ッ」
「もっともっと、感じて欲しいな」
やがてユウリの指先は、乳房だけに留まらず、臍のくぼみや腰のくびれ、果ては刺激に敏感な下腹などにも這い回り始めた。
体中に張り巡らされた理性の糸を解くように、無遠慮でありながら的確な愛撫をこうも施され続けては、いよいよ正気が保てなくなってしまう。
「アミも私のお腹、触ってみて」
「んんッ」
手首をそっと捕まれ、導かれたその先に待っていた感触。
滑らかな肌触りの薄い皮膚は、しっとりとした熱を帯びてほのかに温かい。
生命が息づく生っぽさと、重ね合わせた場所から伝わる互いの興奮が混じり合い、淫靡でありながらどこか神秘さえ窺わせるような形容しがたい錯覚に囚われてしまう。
「アミの掌、あったかくて気持ちいいな」
どうやら、ユウリの方も同様の錯覚に溺れていたらしい。
欲望を湛えた双眸を切なげに潤ませながら、ふと指先でこちらの顎を掬い、蜂蜜の滴る親指の腹でそっとアミの下唇をなぞり始めた。
「あ……っ」
物欲しげに薄く開いたその場所へ、紅を引くような仕草でそっと広げられていく熱で溶けた甘いとろみ。
それが口付けの予感だと悟ったその瞬間、薄く蜜の塗られたアミの唇へと妖しげな微笑を浮かべて弧を描くユウリの唇がゆっくりと重ねられた。
まずはふわりと掠めるように、そして徐々に押し付けるように、最終的には貪るように、何度も角度を変えて粘膜を擦り合わせていく。
その間も、愛撫を施す指先はアミの乳房で蠢いたままだ。
口付けのリズムに合わせながら乳頭を弾かれるたび、くぐもった悲鳴を口腔内で零してしまう。
「ン、ふぁ……ッ」
やがて割り開かれた唇の隙間から、ぬるりと舌先が潜り込んできた。
瞬間、鼻腔を抜ける蜂蜜の甘い香りと、口の中いっぱいに広がる独特の甘みは、食事などの際に堪能するそれとは全くの別物で、どこか背徳の味がした。
「は、ンンっ」
いつしかアミの方からも積極的に差し出した舌をユウリのそれと絡めつつ、伸ばした指先で彼女の項、背筋、そしてくびれを辿るようになぞり下ろし、自分がいま味わっている快楽を彼女にも分け与えてやりたいと半ばがむしゃらな愛撫をひたすらに繰り返していく。
恐らくは性感帯なのであろう、刺激に敏感な部分を探り当てる度、腕の中でユウリの肉体がぴくりと跳ね上がるのが堪らなかった。
「アミの指、気持ちいいよ」
「んっ、ン……!」
口付けの合間、うっとりとした吐息交じりに零れる言葉すら、悦楽となってアミの耳朶にじわりと染み込み、全身へと波及する。
施されるすべてを淫らに感じてしまう自身の浅ましさに戸惑いを覚えつつも、もはやそれには抗えなかった。
「僕も、きもちい……。ユウリの、もっと……!」
このまま快楽に翻弄され続けたら、どうなるのだろう。体内に燻る熱がこれ以上の刺激を受けて爆ぜてしまったら、どうなるのだろう――。
妄想ばかりが先走り、アミをますます高ぶらせていく。
「ああっ、は……!」
ほどなくして、その妄想は現実のものとなった。
胸の突起を弾いていたユウリの指が徐々に降下していき、下着の上からアミの秘部を掠めるようになぞったその時、
「んああッ、ァ……っ」
びくりとアミの太腿が跳ね上がり、何度も痙攣を繰り返しながら体内でくすぶっていた熱を一気に吐き出していく。
身体の芯を駆け上がる、電流のような痺れ。
それが絶頂であると知ったのは、アミの呼吸が幾分か整った後のことであった。
「ン、は……」
下肢の痙攣が収まっても尚、動悸は未だ激しいまま、興奮を抑えきれずにいる。
ユウリにそっと撫でられた場所が、未だじくじくと疼いて仕方がない。
愛液でぐっしょりと濡れた下着が性器へと張り付く感触が酷く不快であると同時、自らのはしたなさを思い知らされるようでどうにも気恥ずかしかった。
だが、ユウリは相変わらず濡れそぼったそこを布越しに爪の先で軽く引っ掻きながら、より一層淫らな表情を浮かべてこちらに伸し掛かってくる。
「ねえ、アミ……」
薄桃の唇がそっと耳朶に押し当てられ、生温い吐息交じりの掠れた囁きが鼓膜をふわりと擽った。
「もっと、気持ち良くなれる方法があるよ」
「え?」
「ここをね、私の指で……」
――とろとろになるまで、掻き回すの。
語尾と同時に陰核を指の腹で下着ごとぐりぐりと擦られ、再び戦慄じみた鋭い快楽が触れられたその場所から全身へとたちまち駆け巡る。
その誘惑は悪魔の囁きのようにも思えて、アミは容易に頷くことが出来なかった。
ユウリの指を、自らの体内へ受け入れる。
それがどういうことなのか、何を意味するのか、気付けないほどアミも無知な女ではない。
肉体の内側を暴かれてしまったら、自分はどうなってしまうのだろう。隠しようもない劣情や興奮を一つ残らず探り当てられてしまったら、抱えた煩悩も、浅ましい欲望も、すべてユウリに見透かされてしまうのではないだろうか。
「……ねえ、どうする?」
再び鼓膜へと吹き込まれる、甘い誘惑。
「あ、う……」
アミはごくりと息を呑んだまま、未だ返答を紡げない。
だが、しかし。ユウリの指先に触れられたままのそこは更なる快楽への期待に強く疼き、言葉なくとも饒舌に自らの望みを語っていたのであった。