特殊性癖(足裏くすぐりNTR)

「ほんと、ものわかりの悪い男ってムリ」

頭上から浴びせられた嫌悪感たっぷりの言葉は、どくどくと高鳴る駿介の胸を真っすぐに鋭く刺し貫いた。
あまりの暴言、そして現況に思わず眉を顰めたが、そんな些細な不服を示す仕草さえ彼女の気に障ったらしく、立ち尽くす駿介に向かって今度は厳しい視線を突き付けると、そもそもの元凶はそちらにあるのではないかと容赦なく鼻でせせら笑う。

「彼氏がいるって何度も言ったのにしつこく食い下がって来るなんて、気持ち悪いのよ。だからねえ、剛くん……。五十嵐たちの間にこんな男が入る余地なんてないこと、見せつけてやりたいの」

言いながら彼女が甘えるような仕草で擦り寄ったのは、同じ部署の先輩である佐久間剛という男だった。
彼は自らの身体に絡みつく彼女、五十嵐ミサトの腕を撫でさすりながらまんざらでもなさそうな表情を浮かべつつ、持ち掛けられた提案に頷くと、

「さ、剛君……。脱いで」

言われるがまま、自らのスラックスを寛げると第三者の視線を注がれ続けている状況にも関わらず、下着の中から頭を垂れたペニスをあろうことか堂々と引きずり出してみせたのだった。
現れたそれは未だ萎れたままだというのに、駿介の隠し持つものより何倍も大きく、畏怖さえ感じる程の迫力で佐久間の股にぶら下がっている。
こんなもので、夜ごと彼女を貫いているというのだろうか。
瞬間、こみ上げたのはどうしようもない敗北感と、とてつもない嫉妬心だった。
彼女が駿介へと靡かない理由を物理的に思い知らされたようで、とにかく情けがない。

「まだ勃起してないのに、大きくてゴツゴツしてて……。いつ見ても素敵なおちんちんね。見てるだけで濡れてきちゃった」

恍惚とした表情で引きずり出された佐久間のペニスを、感触を確かめるように何度も掌の中で握りこむ彼女の姿は悔しいほどに美しく、艶めかしい。
あれほどの逸物に貫かれる悦びを知っている彼女が駿介の想いに決して応えてくれない現状は致し方がないと理解しつつも、未だ納得がいかないと居直ってしまうのは何故なのか。
自身の執着心に半ば呆れを覚えかけていたその時である。

「ねえ、駿介も脱ぎなさいよ。剛くんのおちんちんと比べてあげるから」

艶めく彼女の唇から駿介に向かって発せられる言葉は相変わらずナイフのように鋭く、残酷だ。
まるで最初からこちらのコンプレックスを見抜いているかの如く、触れてほしくはない部分を的確に抉り、表に炙り出そうと罠を仕掛けてくる。

「早く脱ぎなさいよ。じゃないと、会社の人事にあることないこと言ってアンタを設計部から追い出してやってもいいんだけど?」
「……ッ」

彼女を想い続ける気持ちのみならず、会社での居場所までをも奪おうと凄むミサトの仕打ちに思わず唇を噛んだが、あまりの出来事に足が竦み、逃げ出す事さえままならなかった。
想い人が他の男の腕に抱かれて幸福に浸る姿など一秒たりとも眺めていたくはなかったのだが、念願かなってようやく配属された設計部から追い出されるのも御免である。
逡巡の後、駿介は震える指先でベルトに手を掛け、それをゆっくりと解きながら結局は彼女に促されるまま、下着の中から自らのペニスをゆっくりと取り出すと、あまりの羞恥に赤く染まった頬を隠すようにして深く俯いた。

「……ちょっと、嘘でしょ?」

次の瞬間、眼前で弾けたのはミサトの大きな笑い声であった。

「信じらんない! こんなにちっちゃいチンポが、剛君と同じチンポだなんて!」

侮蔑と好奇心に満ちた双眸が、駿介の抱える最大のコンプレックスを容赦なく射抜き、完膚なきまでに嘲笑う。
小指の長さとほぼ変わらない、否――それよりも更に短いかもしれない駿介のペニスは自らの心情を表すかの如く自身なさげに小さく萎れたまま、屈辱にまみれて震えていた。

「駿介ってホント、雄として劣ってるんだね。五十嵐、こんなちっちゃいチンポとセックスとかムリなんだけど」

しかも包茎とか最低、と彼女は高笑いと共に委縮した駿介のペニスを詰りつつ、甘えるような仕草で隣に立つ剛の肩口に頭を凭せ掛け、打って変わって媚びた視線で恍惚に溶け始めている男の顔をそっと見上げた。

「じゃあ、剛君。そこへ横になって……。いつもの、始めましょう」

言いながら彼女は自らのデスク上に剛の肢体を横たわらせた後、彼の首元から抜き去ったネクタイで屈強な男の腕をその頭上に縛り上げてみせる。
一体、なにが始まるというのだろう。
下半身のみを露出するという情けない姿のまま、駿介は戸惑いに満ちた眼差しで二人の様子を見守る事しか出来なかった。
やがて彼女は、寛げたスラックスはそのままに、剛の両脚から革靴、そして靴下をも抜き取ってしまうと、愉快げな笑みを浮かべてこちらを振り返り、相変わらずの高圧的な態度でずばり宣言をしてみせる。

「駿介はそこで見てなさい。今から五十嵐と剛君で、イチャイチャするから。五十嵐がいっぱい剛君のこと、可愛がってあげるの」

まさか、社内で情事に耽ろうとでもいうのだろうか。
冗談ではない。そんなものを見せられてしまったら最後、瞼に焼き付いた光景は出社するたびに甦り、駿介を悩ませるに違いなかった。
仕事をこなしている最中にフラッシュバックでもしようものなら、いつか精神を病んでしまう。
逃げ出さなければ。例え設計部から追い出されるようなことになったとしても、ここから逃げ出さなければ自分は穏やかな日常さえも恋敵に蹂躙されてしまう。
結局、竦んだ足を動かす事は出来なかった。
駿介はその場に立ち尽くしたまま、妖しく絡み合う二人の姿を目の当たりにすることとなる。

「じゃあいくよ、剛君。ほら……」

言いながら彼女が手を伸ばしたのは剛の巨大なペニス――ではなく、露わになった足の裏で合った。
薄桃色のネイルで彩られた細い指で、一体なにが目的なのか、そこを擽り始めたのだ。
踵から徐々に爪先へと向けて、でたらめに動き回る節足のような動きでそれは徐々に這い上がっていく。
爪の先が土踏まずの窪んだ部分を掠めた瞬間、外気に晒された足の裏は悦ぶようにピクリと跳ね上がり、寝そべった剛の呼吸が与えられる刺激に耐え忍ぶかの如くひゅっと音を立てて引き攣った。

「剛君の可愛い足の裏、いっぱい擽ってあげるからね」

彼女の声音が楽しげに弾んだと同時、とうとう堪え切れなくなったらしい剛の笑い声交じりの嬌声が、静まり返ったオフィス内に大きく響き渡る。
身を捩り、悶えながら足の裏から伝わる刺激を享受するその姿はひどく滑稽に思えたものの、なぜだろう、ミサトの指先に弄ばれるこの状況がとてつもなく淫らな行為のように思えてきて、駿介は知らず知らずのうちに己の呼吸を弾ませていた。
フェチシズム。これは、恐らくそういった類のものなのだろう。
当人にしか理解できない快楽や愉悦。それをミサトが他の男に惜しみなく施し、奉仕し続けているその光景を眺めているうち、なんだか妙な気分になってくる。
足の裏を擽られるというあまりにも特殊なその状況に性的な何かを覚えたことなど今まで一度もなかったはずなのに、どうして。
と、その時である。
足の裏を擽る手はそのままに、彼女がこちらを振り返った。

「五十嵐ね、剛君の性癖を満たしてあげる為にいつもこうやって足の裏を虐めてあげてるの」

にやりと弧を描いた唇は、あまりにも加虐的で、危険な香りがした。

「どう? 好きな女の子がこんな事させられてるとこ見る気分は」

屈辱か、嫉妬か、それとも羨望か。
謳うように問い質す彼女は心の底から愉快そうに肩を揺らして大きく笑い、嫌悪を隠さぬ鋭い視線で呆然と立ち尽くしたままでいる駿介の姿を侮蔑する。

「変態チビ、五十嵐が剛君の足の裏を擽るところ……。しっかりと目に焼き付けておきなさいよね」

三者の視線をも、特殊性癖の添え物にするつもりなのだろうか。
冗談ではない、早く逃げ出さなければ。
そう何度も思いはしたものの、竦んだ足は相変わらず動かす事が出来なかった。
だが、未だ下着の中から引きずり出したままでいたペニスは、むくむくと頭を擡げ始めていた。

「駿介ったら、なにちっちゃいチンポ勃起させてんのよ。五十嵐が他の男の足の裏くすぐってイチャイチャしてるとこ見て興奮したの?」

目敏いミサトにその兆候を見破られ、頬がカッと熱くなる。
だが、いったん熱を持ち始めたそこは萎えるどころか彼女の視線を浴びたことでますますと膨らみ、己の羞恥を、そして興奮を、赤裸々に外気へと晒してしまう。

「ていうかアンタさぁ、これでフル勃起した状態なの? 駿介のチンポ、勃起したのに剛君の勃起したおちんちんの半分位しかないじゃない!」

その指摘通り、駿介のペニスは最大限に隆起したとしても、せいぜい掌に収まる程度にしか膨らまないのだ。
それに対して机上に横たわった剛の逸物はというと、足の裏から断続的に与えられる刺激が堪らないのか、それは天高く頭を擡げて片手では余るほどの長さと太さを堂々と駿介らに見せつけている。
赤黒く隆起した、幾人もの女を貫いてきたであろう立派なペニスが快楽に震えるたび、駿介は羨望と嫉妬の入り混じる複雑な感情に心を掻き乱され、同時にひどく興奮を覚えてしまった。
そんな駿介の葛藤を見透かしたかのように、ミサトは足の裏を弄んでいるのとは反対の指先で屹立した剛のペニスをそっと撫で上げ、うっとりとした表情を浮かべて眼前の雄に惜しみのない賛辞を贈る。

「五十嵐、剛君の勃起したおちんちんが大好き。駿介のあんな粗ちんと違って逞しくて大きくって……」

脈打つ音すらこちらに届きそうなほど猛々しく勃ち上がったそれは、同性の目から見ても本当に立派な代物だった。
人によっては、畏怖を覚えるかもしれない長さと太さを持つ剛のペニスはミサトの賛辞を受け、更にその硬さを増したようにも思えてくる。
「五十嵐が足の裏くすぐりまくってあげるから、いつもみたいにその立派なおちんちんから沢山精子出してね」
甘く淫らな台詞を投げかけられ、横たわった剛の唇からは興奮の溜息が何度も零れては大きく弾み、徐々にその荒さを増していく。
そして、そんな剛の姿に同調するかの如く、どうしてだか駿介自身の熱も全身へと燃え広がってしまった。
気付けば駿介は自らの手で、小さく屹立した己のペニスを人前だというのに扱き上げ始めていたのだ。
蠢く彼女の繊細な指先が足の裏を擽る動作に合わせ、緩急をつけて激しく、緩く。

「うわ、マジ? この変態チビ……」

気持ち悪い、と。自慰を早速と見咎められ、侮蔑の声が早速とあがる。

「ねぇ剛君。あの変態チビ、五十嵐が洸一君の足の裏くすぐってるの見ながら粗ちんしごきはじめたよ。きもくない? 嫉妬で興奮してオナニーする男とかホントにムリ」

ミサトの言う通り、これは狂った行動だと自分でも思う。
だが、止まらないのだ。
想いを寄せていた彼女が他の男の足を擽って弄ぶその姿に、そしてそれを眺めながら一方的に自分が詰られているという境遇に、駿介はひどく興奮してしまっていた。

「……っ、はぁ……!」

短いストロークを、手の甲に青筋が浮き出る程の力を込めて何度も何度も繰り返す。
もっと見て欲しい。いや、見て欲しくない。
罵って欲しい。違う、甘い言葉を自分にもかけて欲しい。
相反する感情が綯い交ぜとなり、訳が分からなくなる。
いつしか駿介はその目尻に涙を浮かべながら、快楽をひたすらに追及していた。

「どう、駿介。好きな女の子が他の男の足の裏をくすぐって意地悪しているのを見ながらオナニーする気分は?」

敏感な個所であろう土踏まずの部分を執拗に擽りながら、ミサトが嘲笑交じりに尋ねてくる。

「剛君がうらやましい? 駿介も五十嵐に足の裏くすぐって欲しい?」

理性の焼き切れた思考はもはや正常には働かず、問いかけに対して駿介は自らの短いペニスを扱き上げながらガクガクと何度も頷いていた。

「あはははははっ、ダーメ。ムリです、諦めて下さい!」

だが、突き付けられたのは、拒絶だった。
しかし、それさえも興奮材料と化けて、荒れ狂う熱はその勢いを増すばかりである。
そして駿介の視線を受け止めながら足を擽られ続けている剛の方も、どうやら限界が近づいてきているらしい。
擽られるたびに大きな足の裏、そしてペニスはビクビクと震えあがり、その色を真っ赤に染め上げている。

「剛君射精しちゃいそう? いいよ、五十嵐のためにいっぱい精子出してね……」

言いながら彼女は何を思ったのか、自身のピンヒールをゆっくりと脱ぎ、更にはスカートの下に履いていたストッキングをもゆっくりと、剛と駿介の二人に見せつけるかの如く脱ぎ取ってみせた。

「剛君の精子、五十嵐の足の裏に出して欲しいな。五十嵐の足の裏、剛君に犯して欲しいの」

曝け出された艶めかしい細い脚が、男の絶頂を求めて妖しくくねる。
あの白い脚が、他の男の精子で穢される?
瞬間、握り込んだペニスがどくりと脈を打ち、膨れ上がる感覚を覚えた。

「じゃあ、本物の雄の射精……。あの粗ちんに見せてあげて」

甘い囁きと共に、再びミサトは赤く染まった剛の足の裏、それも土踏まずの部分を集中的に十本の指先で念入りに擽って容赦のない刺激を惜しみなく与え始める。
その度に天を向いた巨大なペニスはヒクヒクと震え、先走りをとめどなく零しては限界の頂へと昇っていった。

「ほら変態チビ、よく見ておきなさい。アンタの好きな女の子はねぇ、剛君の足の裏をくすぐってるのよ。五十嵐、駿介の足の裏なんて一生くすぐってあげないんだから」

今ではぶつけられるその罵声すら、愛撫となって駿介のペニスに突き刺さる。
一体、自分の身体はどうなってしまったのだろう。
嫉妬に狂っていたはずが今では他の男の足を擽る彼女に背徳感を覚えて興奮して、自らを慰めてしまうなんて。

「あ……ッ」

突如、机上に寝そべっていたはずの剛がその上体を勢い良く起こし、ミサトの手を強く引いた。

「剛君、射精しそうなの? いいよ、いっぱい出して」

どうやら絶頂が近いらしい。
ミサトは擽る手を止めると、今度は自らがデスクの上へと乗り上げ、ピンヒールを脱ぎ去った足の裏を赤黒く勃起した剛のペニスに向けた。

「剛君の精子で足の裏汚してもらえるなんて、嬉しいな……。五十嵐の足の裏にいっぱいぶちまけてね」

うっとりと紡ぐ彼女の頬は、薄明りの中でもはっきりと分かるほどに上気して、幸福そうに蕩けていた。
剛の一風変わった性癖を受け止めるどころか、自らも同調して興奮する彼女の姿はひどく淫らで、煽情的だ。
ああ、羨ましくて仕方がない。
駿介の深く皮を被った小さなペニスも愛してもらえることが出来たらどんなに良かっただろう――と。
あり得ない妄想に取り憑かれながら、駿介はより激しく自らの熱を扱き上げ、更なる興奮と刺激を追求する。
と、その時だった。

「ああっ……、剛君のおちんちん、五十嵐の足の裏に射精しちゃってる……。すごい……」

陶磁器のように白いミサトの足の裏が、どろりとした白濁で汚された。
剛の巨大なペニスは溜め込んでいた精子も相当の量だったらしく、全部出し切るまでに何度も扱き上げなくてはならない程であった。
根元から先端へ、握り込んだ掌をスライドさせる度にその先端から残滓が飛び出し、ミサトの足の裏を容赦なく濡らしていく。

「変態チビの粗ちんとは比べ物にならないほど大きくて素敵な剛君のおちんちんが射精して、五十嵐の足の裏、精子で汚されちゃってる……」

絡みつき、滴り落ちる精子の感触を確かめるかの如く、足裏の五指を丸めながらミサトが相変わらずのうっとりとした声音で駿介を罵り、剛を称賛した。
そして続けざま、こんな提案を――否、断りようのない絶対的な命令を、容赦なく浴びせてきたのだった。

「ねぇ、剛君の精子まみれになっちゃった五十嵐の足の裏、アンタの舌でお掃除してくれない?」

あまりの要求に、思わず駿介は自身を扱き上げていた手を止めてミサトの顔を凝視してしまう。

「聞こえなかった? 五十嵐の足の裏にべっとりついてる剛君の精子、アンタの舌で舐めてとってよ」

他の男が吐き出した白濁を舐めとれなど、屈辱以外の何物でもない。
さすがにそんな事は出来ないと駿介は小さく首を振り俯いたのだが、その反抗的な仕草がミサトの機嫌を損ねてしまったらしく、更なる鋭い言葉と要求が浴びせられることとなった。

「駿介みたいな変態チビに五十嵐の足の裏舐めさせてあげるんだから、ありがたく思いなさいよね! こんなの、アンタの人生で二度とないチャンスなのよ」
「……ッ」
「ほら、五十嵐様の彼氏の精子を舐めとらせて頂きますって言いなさいよ」

嫌だ、そんな事はしたくないし、言いたくもない。
だが、しかし――どうしてだか握り込んだままでいる小さなペニスは熱を失うことなく、要求に対して拒絶を示す心とは裏腹にドクドクと脈打ち、更に大きさを増したようだった。
まさか自分は、こんな状況に追いやられても尚、興奮しているのだろうか。
ゆっくりと顔を上げると、机上に腰を下ろしたまま憤慨している様子のミサトと、衣服を整えながら好奇の視線をこちらに向けている剛の視線とかち合った。

「……ッ、舐めとらせて、くださ……」
「聞こえない!」
「五十嵐様の、彼氏の精子を舐めとらせて下さい……!」

絞り出した声音は、こみ上げる興奮を抑えきれず、上擦るように震えていた。
ほとんど自棄のような気持ちで屈辱的な台詞を叫んだ後、駿介は床に膝をつき、机上に腰を下ろすミサトの足元へと近づいた。

「グズグズしないで、五十嵐たちはこの後もここで楽しむんだから。オナニーしながら五十嵐の足の裏についた剛君の精子舐めとりなさいよ!」

叱責に促され、心の準備を整える間もなく駿介は震える舌先を伸ばし、ミサトの足裏に滴る白濁をまずはそっと掬い上げてみる。
瞬間、青臭い香り、そして今までに味わった事のない奇妙な苦みが口腔内に広がり思わず顔を顰めてしまったものの、自身を慰める手は止まらない。
もうどうにでもなれという自暴自棄な勢いのまま、ひたすらに熱を育て上げ、呼吸を乱し、ただ絶頂のみを求めて力強いストロークで自慰を再開しながら濃厚な精子を無心で舐めとり続けるしかなかった。

「駿介ったら、短小チンポギンギンに勃起させてオナニーしながら、五十嵐の足の裏についた、剛君の白くてドロドロの粘っこくていやらしい精子舐めてる……」

自分から命じておきながら、いざ実際に舐めとられてしまうと君の悪さを感じたらしいミサトの声音は、これ以上ないほどの嫌悪感に満ちていた。

「う、……ッ」

まずは滴り落ちる雫を止めるように踵へ舌を這わせ、時折吸い付くようにして青臭く濃厚な精液を努めて丁寧に舐めとっていく。
何度もえづきそうになったものの、いったん舌に乗せたそれを万が一、吐き出してしまったら今度はどんな仕打ちを受ける事か。
屈辱と、興奮と、背徳。
様々な感情が混じり合う中、いま駿介に許される行為といえば彼女が命じるままに己のペニスを扱き上げながら、こうして恋敵の精液を舌で掬い取る事だけだった。

「アンタは粗ちんなんだから、五十嵐の足の裏にべっとりついてる、剛君のドロドロの精子をありがたく舐めとってごっくんしなさい。出来るでしょ?」

促され、舌の上にたっぷりと掬い取ったそれを、ほんの僅かな躊躇の後、喉を鳴らしてごくりと飲み込んでみる。
食道をゆっくりと下る、どろりとした感覚が気持ち悪くて仕方がない。
鼻を抜ける青臭い香りも、飲み込むことでより一層、その濃厚さを増したように思えて非常に不快であった。
女性の愛液とはまったく異なるそれを、喉が――否、駿介の全身が拒絶をする。
恐らくこれは本能的な反応だろう。自分とまったく同じ男体から生成された精子を受け入れる事を全細胞が拒んでいるかのような、言いようのない絶対的な拒否反応であった。
いつまでこんな苦行が続くのだろう。
愛しい女性の足に舌を這わせているというのに、まったくと言って良いほど充実感だとか、幸福な気持ちが一切湧いてこない。
はやく終われ、はやく解放してくれ。
そう心の中で何度も願いつつ、目尻に涙を浮かべて堪えていたというのに――。

「うわぁ気持ち悪い。この変態チビ、めっちゃ嬉しそうに五十嵐の足の裏についた洸一君の精子舐めとってる」

だが、駿介は何かに取り憑かれたように、一心不乱に滴る精液を舐めとり続け、自身を扱き続けている。
なぜ、このような状況に追い込まれても尚、下半身の熱が冷めないのだろう。
もはや、何に対して性的興奮を覚えているのかすら見失う。

「あァ……ッ」

土踏まずの窪みや指の間に溜まった精液をはしたなく音を立てながらズズッと吸い上げた、その時だった。

「きゃっ! やだ、汚い……。この変態チビ、五十嵐の足の裏についた剛君の精子舐めながらマジで射精してる……!「

駿介は、射精してしまった。
ドロドロの青臭い精子を飲み下したその瞬間、一体なにに興奮したというのだろう――皮を被った亀頭の先端から、ドクリと白濁が溢れ出したのだ。

「駿介のちっちゃいチンポが不潔な精子出してる……。べとべとしててきもちわるーい! 最低、ホントにムリ。この異常性癖者、変態チビ。気持ち悪いのよ」

頭上からより激しい罵声が降り注いだものの、なぜだか駿介は今までに味わった事のないような充足感に包まれていた。
背徳と屈辱が与える異様な興奮。罵られることでこみ上げる嫉妬心。
それらに煩悩を掻き立てられ、遂には吐精してしまった事実に驚きつつも、奇妙なその感覚に酔いしれている自分もいる。
ああ、もっとこの倒錯した快楽を味わっていたい。
欲張りな感情のまま、駿介は再びミサトの土踏まずへと吸い付こうと唇を差し出したのだが、

「もうやだ! いつまで舐めてんのよ、気持ち悪い。五十嵐から離れてよ!」

自らの唾液と白濁に濡れた彼女の足の裏が、乱暴に駿介の頭を蹴り飛ばした。
駿介は下半身を曝したまま、無様にもカーペット上へとその身を横たえ、先ほどまで味わっていたとてつもない興奮の余韻から抜け出せないまま、衣服を整え終わったらしい剛と、取り出したハンカチで熱心に自らの足裏を拭っているミサトの姿をぼんやりと眺めていた。

「五十嵐はこの後も剛君と、ラブラブ足の裏くすぐりごっこするから、邪魔しないでよね。さっさと出て行ってちょうだい、この変態チビ!」

どうやら二人はこのままオフィス内に残って、更に行為を楽しむつもりでいるらしかった。
なんでもするから自分も混ぜて欲しい。
そんな身勝手な要求が喉の手前までこみ上げてきたものの、そんな台詞を口にすれば最後、聞き分けの悪い男は嫌いだとどんな仕打ちを受けるか分からない。
駿介は白濁に塗れた自らの下半身を拭うことさえしないまま下着を身に着け、急いで衣服を整えると、ふらふらとした足取りでエレベーターホールへと駆け出したのであった。